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ニュースリリース

栃木県「トマトハモグリバエ」の特殊報

2002年4月10日

栃木県農業環境指導センターより「トマトハモグリバエ」の特殊報が発令されました。
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平成14年度病害虫発生予察特殊報第1号
                                栃木県農業環境指導センター
                                平成14年4月9日発表

本県において、中南米原産の害虫であるトマトハモグリバエの発生が確認されました。本種は、平成11年に日本で初めて確認され、これまでに32都府県で記録されています。また、本県各地で発生しているマメハモグリバエに形態、加害状況とも似ていますが、ウリ科作物にも多発することが特徴です。

病害虫名:トマトハモグリバエ(Liriomyza sativae BLANCHARD)

1.発生確認までの経過
当センターは、平成14年2月に、県南部のトマトで、ハモグリバエ類幼虫による被害葉(絵描き症状)と葉上の蛹を確認した。幼虫を飼育し、羽化した成虫を横浜植物防疫所調査研究部に同定を依頼した結果、トマトハモグリバエと同定された。
発生を確認した株は、8月下旬に購入した苗によるもので、秋以降発生が認められ、2月には全株に発生していた。
 
2.トマトハモグリバエの特徴
(1)形態             
成虫:体長は1.3~2.3mm、翅長は1.25mm(雄)~1.7mm(雌)。体色は黄と黒のまだら模様で、頭部の外頭頂剛毛の着生部(上図vte)は黒色で、それが黄色のマメハモグリバエやナスハモグリバエと異なる。体色の変異があるため正確な同定には雄交尾器の確認が必要である。
幼虫:3齢幼虫の体長は約3mm。後気門瘤は3個で、マメハモグリバエと同じ。蛹:長さ1.3~2.3mm、黄褐色の俵状。

(2)生態と被害
雌成虫は産卵管で葉に穴をあけ、その内側に卵を産下する。幼虫は葉に潜ったまま葉肉を食害し、発育すると葉の外に出て葉上または地表に落下し蛹化する。1世代の期間はマメハモグリバエよりやや長く、卵から成虫になるまでに20℃では約27日、25℃では約18日である。卵から羽化までの発育零点は9.6℃で、施設外では越冬できないとされている。マメハモグリバエやナスハモグリバエと混発することもある。
被害は葉の潜孔食害(絵描き症状)及び雌成虫の摂食痕である。マメハモグリバエではあまり問題にならなかったウリ科作物で被害が大きい。

(3)寄主作物
マメハモグリバエと同様きわめて多くの植物に寄生する。特に、ウリ科、ナス科、マメ科には頻繁に寄生が認められる。主な寄主は次のとおりである。
ウリ科:キュウリ、メロン、スイカ、カボチャなど ナス科:トマト、ナス、ピーマンなど    
マメ科:インゲン、ソラマメ、アズキ、ダイズ、ササゲなど
キク科:ゴボウ、シュンギクなど
アブラナ科:ハクサイ、ダイコン、キャベツ、ブロッコリー、コマツナなど
アオイ科:オクラ
  
3 防除対策
(1)ハモグリバエの食害痕のない苗を定植する。
(2)露地野菜は目合い1mm以下の寒冷紗によるトンネル被覆。ハウスは開口部を寒冷紗でふさぐ。
(3)発生ほ場の作物残さは土中に埋め処分する。
(4)雑草も発生源になるので施設内及びほ場周辺を除草する。
(5)トマトについては、スピノエース顆粒水和剤5000倍液を10a当たり100~300リットルで収穫前日までに2回以内で散布する。他の作物についてはトマトハモグリバエとして登録されている薬剤はないが、マメハモグリバエに登録のある薬剤で防除可能である。